モノクロ写真(Black&White)
前回に引き続き『モノクロ写真を撮るときに意識したい10のポイント』を掲載したい。
前回は前編と題してポイント1~4を掲載した。
今回は中編と題してポイント5~8を掲載する。モノクロ写真の撮り方とコツである。少しでもモノクロ写真を撮りたいというモチベーションと写力の向上に役立てば幸いだ。
5.シャープな線を意識する
モノクロ写真の醍醐味といえば、やはり線のシャープさではないだろうか。モノクロというダイナミックな対比のなかに、シャープな線を乗せることで、同時に繊細な表現を生むことができるのだ。
私がモノクロ写真の撮影を行う場合は、主にGRで撮影し『ハイコントラスト白黒』のエフェクト処理をして、シャープ+9にするのがお気に入りの設定だ。
建物を背景にする。看板の描写が細かく表現できる。やはりGRは街撮りには最適だ。秋葉原をぷらぷらしながら撮る。秋葉の街並みは、来る度に看板がめまぐるしく変わるので飽きない。
人気の無い近所の遊園地にて。鎖の線のきめ細かさが際立つ。
滝はハイライトにも利用できる。細かい水の筋や、植物の枝葉が浮き出てくる。
シャープな線を意識することでのメリット
- ダイナミックな中にも繊細さを表現できる。
- F値を絞れる被写体のとき、より緻密な描写をしたい場合に向いている。
- 細かい線を意識させることで、全体としての形はわかりやすくなりすっきりする。
- 開放とは対極にあるので、500pxなどのSNSに海外受けしやすい(かも知れない)
- 単純にシャープでかっこいい写真になる。
余談ではあるが、因みにトップの工場写真はGRではなくEOS5Dによるものだが、500pxの評価は86.4Pulseであった。白黒(Black&White)や植物の写真などが500px受けしやすそうだ。風景は競争率が高すぎて日の芽が出ることは難しい。
6.建築物の構造を意識しながら撮る
建築物とモノクロ写真との相性は抜群だ。静的である建築物をできるだけ動きのある構図で撮るというのも面白い。またひたすらに静かに佇んでいる構図というのもよいだろう。色を排することで、建築物の構造がより際だってくる。
まるで走っている機関車のようなイメージで撮ってみた。バスの窓から撮影したものであるので、水平はでていないが、それもまた動きのある構図としては結果的によかった。
オブジェは建築物とは少し趣が違うが、角度によってさまざまな表情を見せてくれるので、被写体としては面白い。
一見、面白みに欠ける淡々とした構図というのも、モノクロにするとひと味違った空気になる。
東京は建築物の宝庫なので360度見渡す限りが被写体となる。
建築物の構造を意識することでのメリット
- 色より形に注目することとで、色にごまかされない構図を会得できる。
- 静物であっても、その形によって動きを表現できるようになる。
- 唐突に建築写真家に抜擢される。(かもしれない)
- 同じものでも角度によって変わるので、構図の勉強になる。
- パースを意識できるようになる早道となる。
こんなところだろうか。私はにわかであるが、世の中には建築物フェチという人もいるだろうから、他にも色々な意味でメリットはあるのかも知れない。
7.同じものの繰り返しを意識する
同じものがたくさんならんでいるという構図が単純に好きだ。そしてまた細かなものというのがモノクロ写真にはよく似合う。まるで何かの模様のように見えてくる、地と図の関係にも通じるものがある。
ショーウィンドウにならんでいる香水。この写真はやや色味がついている感もあるが、シャープさを試すにはもってこいだ。
正直に話せば、写真の腕よりはハイダイナミック白黒に助けられている。雑然とならんでいるレンガや石畳。同じものの繰り返しはそこら中に溢れているので、被写体としては優秀だ。
同じものの繰り返しを意識することでのメリット
- よりシンプルに、模様のように表現できる。
- 地と図の構造をより深く感覚的に理解できる。
- ごちゃごちゃした中にも整然とした秩序が生まれる。
- 整然とした中にある種のものがなしさが発露し、感情に訴えることができる。
- 同じものがたくさんあるという、面白み。
私は食玩などの小さなフィギュアなどがたくさんならんでいるのが好きだ。コレクター魂がある人間にはこのモチーフは打ってつけであろう。
8.繰り返しのパターンを意識する
これは少し前述のものと重複する部分があるが、平面的な繰り返しではなく、より立体的なパースを意識するというものだ。
人というものも繰り返しの要素となる。地上に於いては、人がゴミのように云々という言葉は禁句だ。
繰り返すことで生まれる無限性。鏡の中の世界もしかり。迷い込んでしまいそうな感覚を表現できる。
整然とならぶ椅子たち。だれもいない人。椅子だけが楽しげに話し合っているようだ。
繰り返しのパターンを意識することでのメリット
- 遠近法を表現しやすくなる。
- 迷い込んでしまいそうな不安な感覚を生み出せる。
- どこかに一緒に向かって行くような一体感を表現できる。
- 写真の中にライブ感を感じさせることができる。
- 静けさと騒がしさの同居した写真が撮れる。
私は群集に紛れて街中を歩いて行くというのがとても好きである。どういう気持ちで歩いているかといえば、詩的な感覚をたずさえながらといったところだろうか。巧く表現することは難しいので、ここでひとつ私が特に敬愛する萩原朔太郎著の詩を紹介しよう。
群集の中を求めて歩く
私はいつも都會をもとめる
都會のにぎやかな群集の中に居ることをもとめる。
群集は大きな感情をもつたひとつの浪のやうなものだ
どこへでも流れてゆくひとつのさかんな意志と愛慾とのぐるうぷだ。
ああ ものがなしき春のたそがれどき
都會の入り混みたる建築と建築との日影をもとめ
大きな群集の中にもまれて行くのはどんなに樂しいことか
みよ この群集のながれてゆくありさまを
ひとつの浪はひとつの浪の上にかさなり
浪はかずかぎりなき日影をつくり 日影はゆるぎつつひろがりすすむ
人のひとりひとりにもつ愁ひと悲しみと みなそこの日影に消えてあとかたもない。
ああなんといふやすらかな心で 私はこの道をも歩いてゆくことか。
ああこの大いなる愛と無心のたのしき日影
たのしき浪の彼方につれられてゆく心もちは涙ぐましくなるやうだ。
うらがなしい春の日のたそがれどき
このひとびとの群は建築と建築との軒を泳いで
どこへどうして流れゆかうとするのか
私のかなしい憂愁をつつんでゐるひとつの大きな地上の日影
ただよふ無心の浪のながれ
ああどこまでもどこまでも この群集の浪の中をもまれて行きたい。
といったところで今回はここまでとする。次回を最終回としたい。
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